気腫合併肺線維症の症状・予防について

気腫合併肺線維症は肺の上の部分に空気が溜まる肺気腫という病変と、肺の下の部分にコラーゲンが沈着してしまう肺線維症という病変が合併した病気になります。

気腫合併肺線維症

2005年になり始めて提唱され始めた病気です。
これまで考えられていた間質性肺炎や肺線維症などの肺疾患との関連も注目されている非常に重要な疾患です。

原因・メカニズム

肺の中には肺胞と呼ばれる細かい風船のような構造が大量に含まれていて、この肺胞でガス交換が行われています。

肺と肺胞

肺胞の表面には細かい毛細血管が大量に走っているのですが、その毛細血管を含む壁には間質というコラーゲンでできた壁が2重に張り巡らされています。

この間質に問題が起こるのが気腫合併肺線維症です。

肺の内部に繰り返し炎症が起こり、肺の内部に非常に重篤な慢性炎症が起こるCOPDなどの疾患が続いていると肺の内部が壊れてしまい、肺のなかから肺胞がなくなってしまいます。

このような炎症が続いてくると肺の内部には、コラーゲンが沈着する線維化が起こり、空気のたまりやすい肺の上部では肺気腫という状態に、コラーゲンがたまりやすい肺の下部分では肺線維症という病態になってしまうのです。

慢性的な肺の炎症と肺気腫を主体としたCOPDと、肺の内部のコラーゲン線維の沈着である肺線維症が併発するとガス交換が十分に行われず、日常生活に非常に大きな弊害をきたしてしまうので注意が必要です。

症状

気腫合併肺線維症の主な症状は、息苦しさとちょっとした刺激で引き起こされる肺炎です。
これは肺気腫という病態と肺線維症という二つの病態を分けて考えると非常に理解が容易になります。

肺気腫

肺気腫という病態は肺の内部に空気がたまりすぎてしまった病態で、肺が過剰に膨らんでいたり、肺が十分にしぼまない場合に起こります。

肺の内部にたまった空気はガス交換に関わることができないので、息をしたとしても息苦しさから逃れることができません。

また、肺気腫が肺胞の破壊による肺の内部にできた大きな空洞が原因となっている場合には、非常に重篤な低酸素状態に陥ることがあるので酸素吸入などを考える必要があります。

肺線維症

肺線維症になってしまうと肺がうまく広がらず、肺の内部に空気がうまく入らなくなってしまいます。
このため、肺のガス交換に関与できる部分が少なくなってしまい、低酸素状態に陥ってしまいます。

このように、肺の上下で肺気腫と肺線維症が混在していると空気もうまく入らず、またガス交換も適正に行われないので気腫合併肺線維症には注意が必要なのです。

予防方法

気腫合併肺線維症の予防には、まず慢性的な肺炎を引き起こさないように注意する必要があります。

肺炎の予防

肺炎の原因として気をつけたいのが間質性肺炎です。

間質性肺炎が悪化してしまうと、やがて肺の内部にコラーゲンが沈着した肺線維症に症状が悪化してしまうことがあります。
したがって、間質性肺炎にかかった場合には肺線維症への症状の進展を避けなくてはなりません。

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禁煙

喫煙を続けていると、COPDなどの慢性的な呼吸器の炎症を引き起こす原因になってしまいます。

COPDを患ってしまうと、慢性的な肺炎と肺胞の破壊によって肺が壊れてしまい、肺の内部に空気がたまった閉塞性障害という状態になってしまいます。

COPDは、肺への刺激による慢性肺炎や喫煙による肺の内側の細胞の破壊などによって引き起こされます。
よって、これらの有害な刺激が積み重なることで肺が徐々に壊れてしまいます。

肺気腫の原因としてCOPDが関与するので、禁煙を続けられるように心がける必要があるのです。

禁煙

禁煙治療は保険適応なので、独力で禁煙治療を続けることが困難な場合には、禁煙外来に通って治療を受けることが必要です。

ニコチン中毒は症状の個人差が多く、独力で対処することができない場合もあります。

どうしても症状がひどい場合やタバコを止めることができない場合には、医師に相談することが大切です。

定期検診を活用する

早期発見と早期治療は健康維持にとって重要な意味があります。

健康診断

気腫合併肺線維症は、一度症状が出てしまうと改善することができません。
このため、症状にいち早く気づき対処することが、進行を食い止める重要な働きをしているのです。

実は呼吸器の異常というのは、気付かぬ間に徐々に症状が変化しています。
ですので、初期の段階では症状に気がつくことができず、大半の人はある程度症状が進行してから医療機関を受診します。

したがって、極力症状が現れる前に病気を発見し、治療にこぎつけることが重要なのです。

早期の治療を受けるためには、定期検診や健康診断などを活用して、自分の健康状態を把握することが大切です。

さいごに

近年になり提唱された気腫合併肺線維症は、息苦しさや低酸素症から多くの患者さんの日常生活に悪影響を与えていると言われています。

症状が悪化し、様々なトラブルを引き起こすことがないように、十分な予防措置を講ずるように気をつける必要があります。