COPDの症状・予防について

COPDという病名は、日本ではまだほとんど知られていませんが、従来、肺が広く壊れた肺気腫、いつも痰が多い慢性気管支炎といわれてきた病気のことを合わせた呼び名です。

COPD

大多数の患者さんでこの2つの病気が混在していることが多く、明確に病名を分けることがむずかしいことが多いのです。

そこで、2001年にWHO(世界保健機関)が、国際的に名称を統一することを提言しました。
COPDという新しい病名が誕生したのです。

Chronic =慢性、Obstructive =閉塞性、Pulmonary=肺、Disease =病気と訳され、日本語では慢性閉塞性肺疾患といわれています。

近年、先進国、途上国を問わず、COPDの患者数、死亡者数の急激な増加がみられることがわかり、その深刻さから注目される病気になりました。

COPDは1990年に第6位だった死亡順位が、2020年には第3位にまで上がると予測されています。

COPDの原因

世界的にますます高齢化が進み、その人口比が増えていること、COPDの原因はほとんどが習慣的な喫煙であり、現在40代以上の人は若いころから長年タバコを吸っている人が多いこと、これまでは診断されずに気付かないで放置されていることが多いことが判明してきたこと、こうしたことから、今後、有病率が高くなることは必至です。

日本におけるCOPDの患者さんは、男性のほうが多いのが特徴です。
近ごろは若い女性の喫煙者がふえてきており、将来は女性の深刻な病気になると考えられています。

年齢的には40代から徐々に発病する人が増えますが、COPDを専門にみている医療機関では、30歳後半で重症の人がときどきいます。
10代の、それも早い時期から日常的にタバコを吸っている人たちです。

65歳以降は、急に患者数が増えてきます。
COPDは、20年以上喫煙を続けると発症することから、必然的に高齢者が多いということになります。

COPDの症状

COPDの初期症状は「痰がからむ」「せきが出る」といった、ごくありふれた症状です。
せき込みながらタバコを吸っている人を見たことはありませんか?

たぶんCOPDという病気を知らない人なら、「かぜをひいたのかな」「ちょっとのどの調子が悪いな」などと軽く考えて、見過ごしてしまうかもしれません。

しかし、もしあなたが、次の1~3のどれがひとつでも思い当たり、年齢が40歳以上ならば、痰やせきの症状も、十分要注意です。


  1. 20年近くタバコを吸っている(あるいは過去に吸ってきた)
  2. 期間は短いが重喫煙者(1日30本以上)の時期があった、同居者がヘビースモーカーであった
  3. 職場で長い間タバコの煙を吸わされてきた、仕事場で粉塵や有害なガスを吸い続けてきた

健康な人では、かぜのとき以外にせきが出たり、痰がからむことはありません。
初期のCOPDでは、かぜをひいていないのに痰がからみ、せきが出ることが多く、しかもその痰やせきはしつこく続き、特に冬季に悪化するのが特徴です。

せきや痰をかぜと思い込み、市販のかぜ薬を多用している人がいます。

また、痰やせきが数ヶ月以上続いているのに、「喫煙者にはありがちなこと」と、あまり気にもせずに、せき込みながタバコを吸っている男性をよく見かけます。
あるいは冬になると、鼻水が出たりのどが痛いという明らかなかぜ症状を繰り返している人がいます。
かぜは軽症のCOPDを一時的に悪化(増悪)させることが知られています。

COPDと気管支ぜんそくは重複することがあり(全体の約10%)、またCOPDが増悪すると副気管支炎や気管支の粘膜が浮腫状態となり、一時的にぜんそくに近い喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)を認めることがあります。

息切れはCOPDの患者さんを最も苦しめる症状です。
COPDの息切れには特徴があり、安静にしているときは自覚することはありません。
COPDで、安静のときにも息切れがあるときには増悪が疑われ、できるだけ早く必要な治療を始めなければなりません。

COPDの予防

これまで紹介した通りCOPDのほとんどは、タバコが原因となっています。
また、一度発症してしまうと現在の医療では、症状が悪化しないようにすることだけで、完治する方法はありません。
したがって、一日でも早く禁煙を始めるのが唯一の予防になります。

どうしても、自分一人での禁煙が難しいのであれば、禁煙外来に相談してみましょう。