医療費控除が変わる?セルフメディケーション税制とは

2017年からセルフメディケーション税制がスタートしました。
いままでの医療費控除では、10万円以上がボーダーラインだったために、高額な医療費の支払いや、家族での医療費を合算した場合での利用がほとんどでした。

セルフメディケーション税制

しかし、セルフメディケーション税制が導入されることにより、医療費控除が受けやすくなります。

セルフメディケーション税制とは

セルフメディケーション税制とは、健康増進と病気の予防を目的として作られた、医療費控除の特例です。
平成29年(2017年)1月1日から平成33年(2021年)12月31日の間で適用されます。
この特例により医療費の削減が期待されています。

というのも、日本の医療費は、年々増加傾向にあり、平成26年のデータでは40兆円を超えています。

医療費の推移

参考:平成26年度 国民医療費の概況

このように、年々増加する医療費の削減が急務となっているわけです。

特に日本は国民皆保険制度によって、これまで3割程度の負担で、高品質な医療を受けることができました。

しかし、近年では少子高齢化も重なったことで、医療費が重しとなっています。

したがって、今回のセルフメディケーション税制の導入により、ちょっとした体調不良だった場合は、すぐに病院へ行くのではなく、ドラッグストアや薬局で購入した市販薬で様子をみることで、その分医療費削減につながるという訳です。

そもそもセルフメディケーションってなに?

セルフメディケーション(self-medication)は、直訳すると自己投薬となります。
この言葉だけを見ると、自分で薬を買って治すことだけを連想してしまいます。

しかし、セルフメディケーションは、自分で薬を購入して治療することだけを示す言葉ではなく、食生活や適度な運動により健康管理を見直し、病気を未然に防ごうという意味合いも含まれています。

セルフメディケーション税制といままでの医療費控除は何が違うの?

冒頭でも紹介しましたが、いままでの医療費控除は10万円を超えて医療費を支払っている人が対象となっていました。

対して、セルフメディケーション税制では、1万2,000円を超えた金額が対象となります。
下限が低く利用しやすくなっています。

上限と下限をまとめると以下の表の通りです。

セルフメディケーション税制の適用例

例えば年収が500万円の人が、5万円分の対象医薬品を購入していた場合、次のような計算となります。

5万円(医薬品購入金額) – 1万2,000円(セルフメディケーション税制下限の金額) = 3万8,000円

この3万8,000円が課税所得額から控除されることなります。

また、最終的な減税額は、次の通りです。

  • 住民税では3,800円 (3万8,000円?住民税率10%※1)
  • 所得税では7,600円 (3万8,000円?所得税率20%※2)

合計で1万1,400円の減税となるわけです。

※1 住民税率は、一律10%
※2 所得税率は、No.2260 所得税の税率|所得税|国税庁を参照

セルフメディケーション税制の対象者

セルフメディケーション税制は誰でも利用できるわけではありません。
利用するには、次の条件をクリアする必要があります。


  • 所得税・住民税を納めている
  • 健康の維持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組を行っている

なお、一定の取り組みとは次の通りです。


  • 特定健康診査(メタボ検診)
  • 予防接種(インフルエンザなど)
  • 定期健康診断
  • 健康診断
  • がん検診

税金を納めていて、会社の健康診断を受けていれば条件はクリアしていますので、多くの方が条件をクリアしているはずです。

セルフメディケーション税制の対象となる薬

セルフメディケーション税制の対象は、スイッチOTC医薬品と呼ばれる薬が対象となります。

スイッチOTC医薬品とは、元々医療用医薬品で利用されていたものが、ドラッグストアで販売してもよい医薬品になったものを指します。

また、医療用医薬品として使われていた医薬品の為、一部には薬剤師のアドバイスが必要な薬があります。

スイッチ:医療用医薬品から転用(スイッチした)医薬品のことを指します。
OTC:Over The Counterの略で、カウンター越しにつまり、対面販売で薬を買うことを意味します。

スイッチOTC医薬品の例

  • ロキソニンS
  • ガスター10
  • アレグラFX
  • etc…

テレビCMなどで流れている薬も多く、日常的に利用している薬が多いはずです。
その他の医薬品は、厚生労働省のセルフメディケーション税制対象医薬品一覧を確認してください。

ちなみに、セルフメディケーション税制の対象商品には、2016年10月以降に製造された薬のパッケージには、以下のロゴが入っていますので、購入の際に確認してみて下さい。

セルフメディケーション控除対象

参考:日本薬剤師会

セルフメディケーション税制対象商品を購入してみた

定期的に利用しているロキソニンSを購入してみました。
以下のようにレシートには、セルフメディケーション税制対象商品であることが記載されていました。

ロキソニンS セルフメディケーション税制対象商品 レシート

ちなみに、パッケージにはまだ上記のマークは入っていませんでした。
セルフメディケーション税制のロゴが入る前の在庫だったのかもしれません。

また、2017年4月よりamazonでもセルフメディケーション税制対象商品が購入できるようになりました。
今後取り扱い商品を増やしていくようです。

申請方法、手続について

セルフメディケーション税制による控除を受けるには、確定申告をする必要があります(今回は確定申告の方法については省略します)。
その際に次の2点が必要となります。


  • 対象のスイッチOTC医薬品のレシートもしくは、領収書
  • 予防接種や健康診断などの領収書や結果通知書(詳細はこちら

なお、通常の医療費控除とセルフメディケーション税制を両方利用することはできませんので、どちらかを選んで申請することになります。

ちなみに、セルフメディケーション税制も医療費控除と同様に家族で合算が可能です。

さいごに

セルフメディケーション税制について紹介しました。
これまで医療費控除を利用できなかった方でも、セルフメディケーション税制なら利用できる機会が増えるかもしれません。

また、健康増進を目的とした税制なのでこれを気に積極的に健康管理を行うようにしましょう!