脳の血管(動脈)の壁が動脈硬化で厚くなって、血管の内腔が細くなり、さらにそこに血栓とよばれる血液の塊が付着すると、血管が詰まって血液が途絶えてしまいます。
すると、脳に血液がいかなくなり、その領域の脳細胞が機能できなくなり、死滅(壊死)してしまいます。
こうして、血流が途絶えて死んでしまった脳組織のことを脳梗塞といいます。
一般的には、死んでいない神経細胞が多数残っていても機能ができなくなっていて、CT検査やMRI検査で変化が認められる脳も脳梗塞と呼んでいます。
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脳梗塞は脳血管が詰まる病気
脳細胞が活発に機能するためには、絶えず酸素とぶどう糖を運んでもらわなければなりません。
脳はこれらを自分では貯蔵しておくことができず、常に使う量を供給されないと、すぐ機能できなくなり死に向かいます。
脳の重量は体重のわずか2%にしか過ぎないのに、脳が受ける血液の量は、心臓が送り出す血液の約20%にも達し、その血液量は1分間に約700 mlです。
脳がいかに多くの血液を必要としているかがわかります。
そのため、血管の閉塞などによって脳への血流が正常の40%以下になると、脳の機能が低下してマヒを起こし、20%以下になると短時間で脳細胞は死んでしまいます。
脳の血管が詰まると、その領域の中心部では血流が極端に少なくなり、脳細胞は死んでしまい脳梗塞になります。
脳梗塞の3つのタイプ
脳梗塞は、動脈が詰まった原因や詰まった動脈の太さ、位置によって、初発症状の現れ方、その後の経過、特徴なども異なり、治療法も異なることから次の3つのタイプに分けています。
脳の太い血管が動脈硬化で詰まった「アテローム血栓性脳梗塞」
アテローム血栓性脳梗塞の症状は、詰まった部位によって異なります。
例えば、前頭葉や側頭葉にいく中大脳動脈が詰まった場合は、反対側の上下肢(手足)や顔面の運動マヒ、感覚のマヒなどが現れ、とくに脳の左側で脳梗塞が起こると言葉がしゃべれなくなったり、聞いてもわからなくなる失語症となります。
椎骨動脈が詰まると、めまい、吐き気、嘔吐、ろれつが回らなくなったり、食べ物が飲み込みにくくなったりします。
脳底動脈が詰まると、四肢(両手足)のマヒや意識障害が現れます。
アテローム血栓性脳梗塞がもっとも発症しやすいのは、血圧が変動しやすい朝方と睡眠中です。
脳の中の細い血管が詰まった「ラクナ梗塞」
症状が出やすい場所にできた場合は、片マヒやろれつが回らないなどの症状が出てラクナ梗塞と診断できます。
しかし、病巣が小さいため、70%ぐらいでは明らかな症状が現れず、気付かれずに経過してしまいます。
この場合、検査を受けて画像で見つかると、「隠れ脳梗塞」とか「無症候性脳梗塞」と呼ばれます。
認知症の代表的な疾患の一つに「脳血管性認知症」があり、これは脳梗塞や脳出血などが広範囲に及んだり、発生する場所によって認知障害をきたしますが、ラクナ梗塞が原因になることがあります。
明確な発作がないままにラクナ梗塞が脳内に多数発生し(多発性脳梗塞)、少しずつ症状が進行していき、記憶障害、判断力低下、などの認知機能障害が生じてくるのは脳血管性認知症です。
心臓から小さな血の塊が飛んで脳の血管に詰まった「心原性脳塞栓症」
心原性脳塞栓症は、心臓に出来た血栓が発症の原因です。
急に詰まるので、症状がほかより突然に生じる特徴があります。
もともと血液を流していた範囲の機能が障害されて症状が出ますので、詰まった血管の種類やその範囲によって症状は異なります。
多くは日中の活動時に突然起こることで、手足の運動マヒや感覚障害、意識障害などが一気に現れます。
また、ほかのタイプの梗塞と異なり、突発完成型といって、発症時にもっとも症状が重いのも特徴の一つです。
日本での各タイプの頻度は、以前は圧倒的にラクナ梗塞が多い傾向にありました。
ですが、食事や生活習慣の欧米化が関係してか、現在では、アテローム血栓性脳梗塞が増え、ラクナ梗塞より多くなっています。
また、心原性脳塞栓症2つのタイプのものよりやや少なくなっています。
脳梗塞の予防
脳梗塞は、高血圧や動脈硬化、高脂血症などの危険因子によって引き起こされます。
これらの危険因子を日常的に排除するには、適度な運動や減量、禁煙、飲酒量の見直し、バランスのとれた食事(減塩)が重要です。
また、血栓を防ぐためにも適度な水分補給も必要になります。
なお、定期的に健康診断や脳ドックを行うことで、体の現状を知ることができるので、積極的に受けることをおすすめします。