胃がんというのは胃の粘膜にできた悪性腫瘍の総称で、実は一口に胃がんといっても様々な種類があることが知られています。
病理検査という検査によって胃がんの分類を行うと、その90%以上が腺腫(粘膜から発生する腫瘍)に分類され、胃がんの広がり方に応じて早期胃がんと進行胃がんに分けられています。
- 早期胃がん
- 進行胃がん
早期胃がんでは粘膜内に胃がんが留まり、癌が非常に小さい段階のものを言います。
早期胃がんの中でも初期のものは内視鏡のみで治療を行うことができますが、ある程度進行胃がんに近い状態まで進行してしまうと外科的な手術が必要になることがあります。
あらかじめ病理検査を行い胃がんの進行段階を把握する必要があるのです。
進行胃がんでは、胃の周囲にあるリンパ節まで転移が広がっている可能性がある癌です。
進行胃がんの中でも初期の段階であれば、外科的な処置と抗がん剤などの化学療法による治療が可能ですが、症状が進行してしまうと他臓器にまで転移してしまい、手術が不可能になってしまうこともあります。
胃がんは食事との関係が指摘されていて、特定の栄養素の偏りや、塩分の過剰摂取が胃がんに悪影響を与えると考えられています。
近年では胃がんの死亡率は低下していますが、ピロリ菌という細菌の感染による胃がんの悪影響などが報道され、その知名度は非常に良く知られています。
胃がんが起こりやすい年齢は50歳前後程度と言われていますが、早い場合では30代で胃がんが見つかった例もあります。
年齢をあまりあてにせず、適切な検査を受けることが重要です。
原因・メカニズム
胃がんは、胃の粘膜に繰り返し起こるダメージと修復システムとのバランスが崩れることによって発症します。
胃の粘膜にピロリ菌などの細菌が住み着いていると、慢性的に胃に炎症が起こりひどい場合には、胃の粘膜が壊れ潰瘍ができてしまうことがあります。
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このような状態になってしまうと、胃は自分の粘膜を修復しようとするのですが、この時に修復がうまくいかず細胞に異常をきたしてしまうことがあります。
この異常な細胞が胃がんの原因です。
細胞分裂をある程度ちょうどいい段階まで調整し、細胞が増えすぎないようにするのが正常な細胞ですが、異常ながん細胞では細胞分裂が止まりません。
場合によっては他の臓器にまで血流に乗って流れ着いてしまい、人体に悪影響を与えてしまうのです。
症状
胃がんは以下のような症状が知られています。
ですが、胃がんは初期の段階ではほとんど症状が現れず、大半の方は人間ドックを受けて初めて胃がんと気づきます。
- 無症状
- 体重の減少
- 腹部の不快感
- みぞおちの痛み
- 食欲の減退
- 吐き気
- 便が黒くなる
- 疲れやすくなる
胃がんの症状は、進行して初めて腹部の不快感や便の色の変化などの症状が現れるのが特徴です。
症状に気がついて胃がんを疑った場合には、進行胃がんまで発展してしまうことがあります。
予防方法
胃がんの予防には幾つかの方法があります。
食事
胃がんの予防で重要なのは食事の内容をしっかりと管理することです。
塩分が多く、βカロテンが不足していると胃がんになりやすいことがわかっています。
あまりにも続けてしまったり、熱すぎる食事をとり続けるのも胃がんに悪影響を与えてしまいます。
βカロテンは、ニンジンやカボチャなどに多く含まれているので、食材の種類に気を配り、バランスの良い食生活を心がけることが予防につながります。
ピロリ菌の除去
ピロリ菌は胃の粘膜に住み着く細菌で、胃酸を中和する成分を持っています。
この細菌が胃の粘膜に住み着いてしまうと、胃に慢性的な炎症が起こってしまうので非常に危険な状態です。
ピロリ菌は尿素呼気試験という検査で検出できます。
この検査では尿素を含んだ薬を飲み、吐いた息を調べるだけなので、痛みも伴わず簡単に細菌を発見することができます。
仮にピロリ菌が見つかったとしても3種類の抗菌剤を服用することで除去できるので、胃がんの発症可能性を大幅に低下させることができます。
禁煙
喫煙は胃がんだけでなく、肺がんや咽頭がん、喉頭がんなど様々ながんに関与していることがわかっています。
このため、近年では禁煙外来などの禁煙専門の治療環境が整い、様々な医療的サポートを受けられるようになってきました。
禁煙治療は保険適応されているので、誰でも安価に禁煙治療を受けることができるようになっています。
自分一人で禁煙を継続するのに困難を感じている場合には、禁煙治療の利用を検討するのが適切です。
検診
胃がんの予防で最も重要なのは、前がん病変と呼ばれるがんの一歩手前の段階で発見することです。
がんに進行する前には、前がん病変という正常ともがんとも言えない中間の段階があります。
前がん病変の段階で、治療を行うとがんになる前に病気を完治することができる場合もあるので、定期的に検診を受けることが大切です。
検診では胃カメラを使って直接胃の壁を調べることができるので、健康維持のためにも1年に1度くらいの頻度で検診を受けるのが重要です。