潰瘍性大腸炎の症状・予防について

潰瘍性大腸炎は、主に大腸の粘膜に起こる激しい炎症で、直腸から始まり大腸全体に炎症が広がっていくのが特徴です。

粘膜が壊れてしまうため、びらんという粘膜の下の組織がむき出しになった状態や、びらんに炎症が加わった潰瘍などの激しい炎症を引き起こすため、長期化すると大腸本来の構造が失われてしまいます。

潰瘍性大腸炎

あまりに症状が長期化してしまうと大腸がんなどのリスクにもなりうるので注意が必要です。
潰瘍性大腸炎は厚生労働省が定める特定難治性疾患という病気の中でも特に最多の発病率を誇る病気です。

近年患者数が急増しているので、注意が必要な疾患として注目されています。

原因・メカニズム

未だに発症の原因は特定されていません。

自己免疫の異常が関与していることはわかっているのですが、どのような仕組みで免疫器官が大腸を攻撃してしまうのかには未だに明確な答えが示されていないため、発症のメカニズムも今の所不明確なままです。

最近では、なんらかの遺伝子の関与が指摘されており、欧米では潰瘍性大腸炎の患者さんの20%に遺伝的な関連性が見受けられると報告されているので、今後の研究により遺伝的な要素が解明されると期待されています。

症状

潰瘍性大腸炎の症状は大腸の炎症によるものです。
主に下痢・血便・腹痛が現れ、症状が悪化するにつれ発熱や体重の減少などが見られます。
腸以外にも皮膚や眼球の結膜にも炎症が現れることがあるので、お腹以外の症状にも注意が必要です。

症状が出はじめてから治療を行うと症状が一旦軽快します。
このような症状が消えた状態(寛解といいます)が長く続くことはなく、大半の方は再発(再燃といいます)を繰り返してしまうので、症状を抑え続けるためにも内科的な治療を行う必要があります。

発病後7?8年経過した方の中には大腸がんの合併を伴う方もいます。
ですが、基本的には健康な人とあまり大きく差が出ることはないので、適切な治療を継続することが重要です。

このように症状が治まる寛解や、症状が現れる再発を繰り返したりする疾患は徐々に臓器を壊してしまい、症状がより出やすくなることがあります。

このため、一度発症し、潰瘍性大腸炎と診断を受けた場合には再発を防ぐための予防的な治療を行う必要があるのです。

潰瘍性大腸炎の検査

潰瘍性大腸炎の検査は血液検査や注腸造影検査、内視鏡検査、生検組織検査などの検査が行われます。

  • 血液検査
  • 血液検査では貧血や炎症反応の亢進が見られます。
    血液検査は潰瘍性大腸炎の診断に欠かせない検査で、感染症の有無を調べるためにも重要な役割を果たします。

  • 注腸造影検査
  • 注腸造影検査というのは大腸内に造影剤を入れ、レントゲン写真を撮影する検査です。
    通常の大腸では確認できないような表面に隆起のない水道管のような大腸になっている場合には潰瘍性大腸炎を疑う必要があります。

  • 内視鏡検査
  • 内視鏡検査では大腸を直接観察することで大腸の状態を把握します。
    直腸から始まり、連続して大腸の奥の方まで炎症が広がっていくので、炎症の程度や粘膜の壊れ方の程度などを把握します。

  • 生検組織検査
  • 生検組織検査では大腸の粘膜の一部を採取して検査を行います。
    内視鏡検査と同時に行うことが可能で、顕微鏡で大腸がどのように変化しているのかを分析します。

予防方法

潰瘍性大腸炎は未だに原因が特定されていないので、発症自体を防ぐ具体的な予防法はありません。

しかし、一度発症した後には内科治療によって再発を予防する治療法があるので、寛解後の再発防止治療を予防策として行うのが一般的です。

内科的治療による予防

内科的な治療では腸の炎症を抑える薬の投与を行います。
再燃予防のためには5-ASA製薬という薬や、副腎皮質ステロイド薬などの炎症をコントロールする薬の投与を行うことが一般的です。

免疫抑制薬や免疫調整役などは症状が非常に重い患者さんの再燃予防に用いることがあるのですが、感染症にかかりやすくなるため使用は慎重に行われます。

潰瘍性大腸炎の寛解の維持には薬の服用が重要な役割を果たしています。
寛解状態を維持し続けるように薬の服用を心がける必要があります。

また、ここ最近では投薬治療だけでなく、腸内フローラに着目した治療も行われています。
潰瘍性大腸炎など腸の炎症を伴う難治性の疾患では、腸内フローラの腸内細菌のバランスが崩れていことが多い為です。

よって、腸内細菌のバランス改善が期待できる、糞便移植療法という治療も行われるようになってきています。

参考健康な人の腸内細菌を注入する「糞便移植療法」|千葉大学医学部附属病院

生活の改善

潰瘍性大腸炎が発症した場合にはある程度生活を規則正しくすることが重要です。
症状が出ている間には注意が必要で、症状の悪化を防ぐためにストレスの軽減や食事による刺激の軽減を考えなくてはなりません。