胃炎、消化性潰瘍(胃・十二指腸潰瘍)の症状・予防

胃と十二指腸というのは一続きにつながっている臓器で、この二つの臓器に炎症が起こる病気がいわゆる胃炎や消化性潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)という病気です。

腹痛

胃炎や消化性潰瘍は細菌によるものや薬剤によるものなど、様々な原因が指摘されており、胃がんや十二指腸がんとの関連が提唱されています。

このように胃炎や消化性潰瘍は様々な病気と関連があるため、非常に注目度が高い疾患で、原因に応じた様々な種類の胃炎が分類されています。

急性胃炎と慢性胃炎

急性胃炎というのは症状が激しく、痛みや発熱を伴う胃炎で、吐き気や胃の痛みが現れます。

一方、慢性胃炎では急性胃炎ほど激しい症状が現れません。
胃の痛みは現れるのですが、吐き気は急性胃炎ほどひどくは現れず、炎症を繰り返している状態です。

原因による分類

胃炎は原因に応じて薬剤性胃炎・放射線性胃炎・細菌性胃炎・ウイルス性胃炎など様々な胃炎に分類されています。

有名なものでは、いわゆるピロリ菌(Helicobacter pylori)という細菌に感染することで起こる細菌性胃炎や、ノロウイルスに感染することで起こるウイルス性の胃炎などが挙げられます。

実際にはこのような分類を複数組み合わせて、より精密に胃炎の分類を行います。

消化性潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)とは

消化性十二指腸潰瘍は胃炎や十二指腸炎がより悪化してしまった病態です。

胃や十二指腸の炎症が長期化すると粘膜がうまく再生されなかったり、粘膜が壊れてしまうことで胃酸が直接胃粘膜を壊してしまったり、十二指腸の粘膜を破壊してしまいます。

このような状態になってしまうと粘膜が完全に失われてしまい、粘膜の真下にある粘膜下層という部分や胃や十二指腸を構成している筋肉まで炎症が広がってしまいます。

このような状態を消化性潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)と言います。

消化性潰瘍にまで進行してしまうと症状が重く、非常に激しい痛みが出てきます。
このまま放置を続けてしまうと、胃がんや十二指腸がんを引き起こす原因にもなるので、注意が必要です。

原因・メカニズム

胃炎や消化性潰瘍の原因は以下のように様々です。

細菌

胃炎や消化性潰瘍の最もよく知られている原因は、ピロリ菌が原因となっている胃炎です。

ピロリ菌は胃の粘膜に住み着き、胃酸を中和することで自分の身を守っています。
このため、胃の粘膜に繁殖したピロリ菌が胃を刺激してしまい、胃炎などの不快な症状となって現れてくるのです。

初期の段階では急性胃炎のように吐き気や胃の痛みなどの症状が目立ちます。
また、炎症を繰り返し長期化してしまうと、やがて慢性胃炎になってしまいます。

ウイルス

ウイルス性の胃炎は、ノロウイルスの感染症が非常によく知られています。
ウイルス感染で消化性胃十二指腸潰瘍にまで発展することはあまりありませんが、ウイルスによる胃炎は非常に良く起こるので注意が必要です。

薬剤

痛み止めの服用を続けていると、胃の粘膜が少なくなってしまいます。
このような薬剤が原因となって胃炎が起こることがあります。
薬剤性胃炎は症状が重い場合や長期間の服用によって、消化性潰瘍にまで発展してしまうことがあるので、注意が必要です。

放射線

放射線が粘膜に影響し、胃炎や潰瘍を引き起こしてしまうことがあります。
がんの治療などで放射線治療を行った際に発症することが知られています。

自己免疫の異常

自己免疫の異常で消化管全体に炎症が起こることがあります。
クローン病などの消化管の自己免疫異常は非常に激しい潰瘍が消化管全体に現れます。
したがって、早急に治療を行う必要があります。

腫瘍によるもの

一部の腫瘍が原因となって胃酸を大量に分泌してしまうことがあります。
胃酸が多すぎることで胃の粘膜や十二指腸の粘膜に炎症が起こるので、注意が必要です。

・喫煙
タバコを吸うことで、胃粘膜の血流や防御能力が悪くなります。
その結果、胃潰瘍に至る可能性があります。

症状

胃炎の症状

胃炎の症状は主に胃の痛みや不快感、吐き気です。
胃炎を繰り返す慢性胃炎では胃の痛みが主体となり、吐き気はあまり起こりません。

消化性潰瘍の症状

消化性潰瘍の症状は主に胃やみぞおちの痛みです。
痛みが激しい場合には生活に大きな障害となるので、早急に治療を行い、症状の改善を図る必要があります。

予防方法

胃炎や消化性潰瘍の予防法は、主に食事とピロリ菌の除去です。

食生活の改善

食生活の改善は胃炎の症状を抑えるために役立ちます。
塩分が多すぎたり、暑すぎる食事は胃の粘膜に悪影響を与えるので、食生活の改善で大幅に症状を抑えることができます。

ピロリ菌の除去

ピロリ菌の感染率は非常に高く、50代以上では約8割の方が感染していると言われています。

ちなみに、ピロリ菌は簡単に検査ができますので、検討してみましょう。
一般に広く行われている検査は尿素呼気試験という検査法で薬を服用したのちに吐いた息の成分を調べるだけなので痛みも全くありません。

尿素呼気試験

ピロリ菌の除去自体も3種類の抗菌薬を組み合わせることで治療が完了するため、体力の低下した方でも簡単に治療が受けられます。

ピロリ菌除去により大幅に胃炎の発症率を下げることができるので、しっかりと検査を行い、適切な治療を受けるように心がけましょう。