【喫煙は万病のもと】タバコを吸うことでなりやすい病気まとめ

タバコが体に悪いと思っていてもすぐに病気になるわけでないため、実感がわきません。
自分は大丈夫だろうと思っているかたも多くいるでしょう。

ですが、喫煙の積み重ねはさまざまな病気のリスクが上昇することが分かってきています。

タバコ 病気

今回は、喫煙によって将来どのような病気にかかる可能性があるかについて紹介します。

タバコを吸うことで発症しやすい病気一覧

1.循環器疾患

循環器疾患

急性心筋梗塞

急性心筋梗塞は、心臓の細胞に栄養が行き渡らなくなり、細胞が死んで(壊死)しまう病気です。

心臓は血液を送り出す臓器ですが、心臓自身にも栄養を送る為に血液が必要になります。
この血液を送るために、心臓の表面には冠動脈という血管が走っています。

急性心筋梗塞では、血の塊である血栓によって、冠動脈が塞がってしまうことで発症します。冠動脈が塞がってしまうと、血液が心臓の細胞へ送られなくなるため、細胞が死んでしまいます。
その結果、心臓が正常な働きをできなくなります。

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タバコとの関連性

タバコで急性心筋梗塞を発症してしまう原因は、主に活性酸素とニコチンがあります。

タバコの煙の中には、活性酸素が含まれており、活性酸素には血管の内側を傷つける効果があります。
したがって、タバコは吸い続けていると最終的には動脈硬化を引き起こします。
これが、冠動脈で起きれば、心筋へ流れる血液がストップしたり、動脈硬化が起きている場所には血栓ができやすくなるため、血栓で血管がつまりやすくなります。

さらにニコチンには、血圧を上昇させる効果があります。
血圧が高い状態が続くと、次第に圧力で血管がもろくなってしまいますので、さらに動脈硬化が進んでしまいます。

2.脳血管障害

脳血管障害

脳卒中

脳卒中は、脳の血管の病気の総称で、以下のようなものがあります。

  • くも膜下出血
  • 脳は複数の膜でおおわれていて、そのうちの1つがくも膜と呼ばれています。
    くも膜下出血では、くも膜と脳の間にある空間に張り巡らせた血管が出血した状態です。

    関連記事 くも膜下出血の症状・予防について

  • 脳出血
  • くも膜下出血とは異なり、脳内へ伸びる血管が出血した状態です。

  • 脳梗塞
  • 脳内の血管が血栓でつまり、脳へ血液が送れなくなった状態です。

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タバコとの関連性

急性心筋梗塞と同様に、活性酸素による動脈硬化、ニコチンによる高血圧が主な原因となっています。
脳内やくも膜下の血管で動脈硬化が進めば、血管がもろくなり、血管が破裂すれば脳内出血、クモ膜下出血が引き起こされます。
また、動脈硬化から血栓が発生し、脳内の血管で詰まれば脳酵梗塞となります。

3.肺疾患

肺疾患

COPD

COPDは、Chronic Obstructive Pulmonary Diseaseの略で、日本語では慢性閉塞性肺疾患と訳されます。
COPDは1つの病気を指すものではなく、次の病気の総称です。
タバコによる肺の病気としては、肺がんとならんで代表的な疾患になります。

  • 慢性気管支炎
  • 肺へ空気を届ける気道に炎症が起きて、痰やせきがでる病気です。
    風邪に伴う気管支炎であれば、風邪が治ると同時に治りますが、慢性気管支炎では、症状が慢性的に出ている状況です。

  • 肺気腫
  • 人間は酸素を吸って、二酸化炭素を吐き出しています。
    このガス交換は、肺の中に肺胞とよばれる場所で行われています。
    肺気腫では、この肺胞が次々に壊れてしまい、最終的には肺の弾性を失ってしまいます。
    その結果、吸った空気を吐き出すことが困難になります。

関連記事 COPDの症状・予防について

タバコとの関連性

COPDは、タバコの煙に含まれている粒子が原因(どの成分が原因かは分かっていません)で発症する疾患です。
特に、煙に含まれる粒子は小さく、気管支だけでなく肺胞にも容易に到達してしまいます。
この粒子が気管支や肺胞に付着することで、炎症を起こし、慢性気管支炎や肺気腫を発症してしまいます。

SRILD(喫煙関連間質性肺疾患)

SRILDとは、smoking related interstitial lung diseaseの略で、日本語では喫煙関連間質性肺疾患と訳されます。
SRILDは、RB-ILDとDIPとよばれる間質性肺炎と肺ランゲルハンス細胞組織球症の3つの疾患の総称です。

間質性肺炎

間質性肺炎とは、ガス交換をしている肺胞の周りを取り囲む組織が炎症を起こす疾患です。
以下のRB-ILDとDIPは、間質性肺炎の中でもタバコが原因となったものを指します。

  • RB-ILD(呼吸細気管支炎を伴う間質性肺炎)
  • RB-ILDは、30歳~60歳くらいまでに発症します。
    慢性的な咳や呼吸困難が症状として現れます。

  • DIP(剥離性間質性肺炎)
  • DIPは、40代の喫煙者に多い疾患です。
    RB-ILDと同様に慢性的なせきや呼吸困難が症状として現れます。

関連記事 喫煙関連間質性肺炎の症状・予防について

関連記事 急性好酸球性肺炎の症状・予防について

肺ランゲルハンス細胞組織球症
ランゲルハンス細胞は、空気の通り道である気道の粘膜に存在しています。
この細胞は、ある刺激を受けると増殖していきます。
ランゲルハンス細胞の増殖が進むと、肺へ到達し、咳や呼吸困難の症状が現れます。

タバコとの関連性

SRILDがどのようにして発症するかは、まだ解明されていません。
しかしながら、患者の90%以上が喫煙者ということで、タバコに含まれる有害物質が影響していると考えられています。

気腫合併肺線維症

気腫合併肺線維症は、COPDでも紹介した肺気腫と肺線維症(肺全体や肺胞などが別の組織に置き換わった状態)を発症し、正常な肺の機能を失ってしまう疾患です。

症状としては、ひどい息切れなどがあります。

関連記事 気腫合併肺線維症の症状・予防について

タバコとの関連性

COPDの1つである肺気腫は発症者の90%が喫煙者で、肺線維症の発症者は、高齢者で喫煙歴のある男性が発症しやすく、タバコを吸っている人に発症する疾患と言っても過言ではありません。

自然気胸

自然気胸は、肺の表面に嚢胞(のうほう)とよばれる袋状のものができて、これが破れて肺に穴があいてしまう疾患です。

関連記事 自然気胸の症状・予防について

タバコとの関連性

自然気胸は、一般的に痩せ型で身長の高い男性がなりやすい傾向にあります。
これに加えてタバコを吸うと発症リスクが高くなります。

非喫煙者が自然気胸になる確率は生涯で0.12%なのに対して、1日に23本以上タバコを吸う人では12.3%と大幅にリスクが上がります。

気管支喘息

気管支喘息は、空気の通り道である気管支が刺激などによって起こるアレルギー症状です。
周囲の平滑筋が収縮、痰などの分泌液により気管支が狭くなることで、息苦しさや咳、痰、呼吸困難などの症状がでます。

関連記事 気管支喘息の予防・症状について

タバコとの関連性

タバコは喘息を誘発、悪化させることが分かっています。
受動喫煙、能動喫煙どちらでも起きます。
なお、喫煙は喘息の誘発、悪化をまねくだけでなく、治療薬である吸入ステロイドの効きを悪くする作用も持っています。

4.消化器疾患

消化器疾患

食道がん

食道は、喉から胃までをつなぐ食べ物の通り道です。
ここに出来るがんを食道がんといいます。
食道の内側にある粘膜から発生します。

食べ物の通り道のため、がんが進行するとしみたり、食べ物が途中でつかえるような感覚がでてきます。
さらに進行すると、食道の周りにあるリンパ節や血管にがん細胞が移動し、他の臓器へ転移します。

関連記事 食道がんの症状・予防について

タバコとの関連性

食道がんは喫煙だけでもリスクが上がりますが、アルコールが組み合わさると次のように、発症のリスクがさらに増します。


  • 喫煙のみ 6倍
  • 喫煙 + 飲酒 50倍

これはタバコの中に含まれる有害物質がアルコールに溶け込むことで、食道粘膜へのダメージを増加させていると考えられています。

消化性潰瘍(胃・十二指腸潰瘍)

胃や十二指腸(胃と小腸の間の管)は絶えず胃酸にさらされているため、自身を溶かされないように粘膜から出る粘液(粘液は、オクラやヤマイモにも含まれるムチンと呼ばれる成分)で守られています。

ですが、ピロリ菌などにより粘膜を傷つけられることで、傷に胃酸が流れ込み、粘膜で守られていない組織を消化していきます。

この状態が胃で起これば胃潰瘍、十二指腸で起これば十二指腸潰瘍となります。

関連記事 胃炎、消化性潰瘍(胃・十二指腸潰瘍)の症状・予防

タバコとの関連性

タバコを吸うことで、粘膜の血流を低下することが分かっています。
その結果、粘膜の防御能力が低下し、胃や十二指腸が胃酸でやられてしまします。
ちなみに、喫煙者が胃潰瘍を発症するリスクは、非喫煙者の3.4倍となっています。

胃がん

胃がんは、胃酸から胃を守る粘液を分泌する粘膜にある細胞ががん化する病気です。
症状としては、胃痛や胃の不快感、吐き気など胃炎や胃潰瘍などでも出る症状の為、定期検診で偶然見つかることが多々あります。
進行すると距離の近い膵臓や大腸などに転移していきます。

タバコとの関連性

胃がんはピロリ菌感染や偏った食事(塩分の多い食事や野菜不足)が原因として知られていますが、喫煙も原因の1つと言われています。
具体的なメカニズムは分かっていませんが、非喫煙者と比較して胃がんのリスクが1.6倍になるということが国立がんセンターの研究で明らかになっています。

参考 喫煙と胃がんリスク

大腸がん

大腸がんは、粘膜にある細胞ががん化する病気で、血便や下痢、下血などの症状を伴います。
なお、大腸がんには良性のポリープである腺腫の一部ががん化したものと
腺腫にならずに直接粘膜ががん化したものに分かれます。

関連記事 大腸がんの症状・予防について

タバコとの関連性

最近の研究で非喫煙者と比較して、喫煙者は大腸がんのリスクが1.4倍というデータが出ています。
タバコに含まれるニトロサミンなどの発がん性物質が関わっているとされています。

参考 http://epi.ncc.go.jp/files/01_jphc/outcome/jphc_outcome_d_010.pdf

クローン病

クローン病とは、国から難病指定されており、主に小腸や大腸に炎症や潰瘍が慢性的にできる疾患です。
また、口から肛門までどこにでも同様の症状が出る可能性もあります。

関連記事 クローン病の予防・症状について

タバコとの関連性

原因は完全に解明されていませんが、喫煙が危険因子の1つとして考えられています。

手術しなければいけないリスクが、非喫煙者と比較して喫煙者はリスクが4倍であるというも分かってきています。

5.肝・膵疾患

肝・膵疾患

ウイルス性肝炎

ウイルス性肝炎とは、肝炎ウイルスが感染することによって発症する疾患です。
A型、B型、C型、D型、E型などウイルスには型があります。

特にB型、C型肝炎ウイルスが感染すると、急性肝炎から慢性的肝炎になります。
また、全ての人がなるわけではありませんが、さらに進行すると肝硬変、肝がんに至る可能性があります。

関連記事 ウイルス性肝炎の予防・症状について

タバコとの関連性

ウイルス性肝炎とタバコの関係は完全に解明されていません。
しかし、最近の研究で、肝炎から肝がんへ移行するリスクを高くするという結果が出ています。

関連記事 喫煙と肝がんリスク

肝細胞がん(肝がん)

肝細胞がんは、肝臓の細胞ががん化する疾患です。
前述したウイルス性肝炎から移行して発症することがほとんどです。

また、ウイルス性肝炎以外にも最近では、食生活の乱れ(アルコールの過剰摂取や暴飲暴食)から、脂肪肝→肝炎→肝硬変→肝がんになるケースも増えています。

タバコとの関連性

タバコとの関連性は、まだ不明な点も多いものの、慢性肝炎から肝がんへ移行するリスクが上がるとされています。

慢性膵炎

慢性膵炎とは、急性膵炎が慢性化し、膵臓に持続的な炎症が生じている状態です。
炎症が続くと正常な細胞が破壊されて、線維化が進みます。
線維化した膵臓は正常な機能が失われてしまいます。

タバコとの関連性

慢性膵炎は、約65%がアルコールによるものとされています。

参考 慢性膵炎 | 東京大学医学部附属病院消化器内科 胆膵グループ

しかし、最近では喫煙との関連性も指摘されています。
まだ完全に解明されていませんが、ニコチンが膵臓の機能を低下させることが、影響していると考えられています。

膵がん

膵がんは膵臓にできるがんで、慢性膵炎からの移行や遺伝的要因、食事、肥満などが原因とされています。
また、膵がんは、予後不良ながんであり、悪性腫瘍で亡くなる方の中で4番目に多いがんとなります。

参考 2015年のがん罹患数、死亡数予測公開 << 国立がん研究センター

タバコとの関連性

前述した通り様々な原因で膵がんになりますが、喫煙だけが唯一の危険因子として明らかになっています。

参考 膵臓がん 基礎知識:[国立がん研究センター がん情報サービス]???

実際に海外での研究は、膵がんになるリスクとして、喫煙者は非喫煙者の2.2倍と発表されています。
日本での研究でもリスクが男で1.57倍、女性で1.83倍という結果になっています。

糖尿病

健康な人であれば食事をした際に血糖値が上昇し、この血糖値上昇を膵臓が感知して、膵臓のβ細胞からインスリンとよばれるホルモンが出ます。

その結果、血中の糖が筋肉や細胞内に取り込まれて血糖値が下がります。

しかし、糖尿病になった人の場合は、インスリンの出が悪くなったり、インスリンが出ていても筋肉や細胞に糖を取り込めなくなるインスリン抵抗性がでてきます。

よって、血中には細胞や筋肉に取り込まれなくなった糖があふれかえります。
この状態が糖尿病です。

糖尿病では、神経や腎臓、網膜など細い血管が集中する箇所に障害が発生します。

関連記事 糖尿病の予防・症状について

タバコとの関連性

糖尿病は、一般的に食生活や運動不足が原因として知られています。

ですが、タバコを吸うことで、一層発症しやすくなってしまいます。
その原因は、タバコを吸うことにより次のことが起きるためです。


  • 交感神経を刺激し、血糖を上昇
  • インスリンの働きを抑制

また、タバコを吸う本人だけでなく、受動喫煙により周りの人にも糖尿病のリスクを上げてしまう危険性があります。

6.腎疾患

腎疾患

慢性腎臓病(CKD)

慢性腎臓病とは、腎障害(蛋白尿や腎機能の低下)が3ヶ月以上続いている状態のことを指します。
初期症状は、ほとんどなく、進行するにつれ、次のような症状がでてきます。


  • 夜間尿
  • 手足のむくみ
  • 貧血
  • だるさ
  • 息切れ

何も治療をしないままにすると、最終的には慢性腎不全へ移行します。
慢性腎不全では、腎臓の機能が失われて、尿から排出していた体の毒素や老廃物を出せなくなってしまいます。
そうなると食事制限や薬だけでなく、人工透析も行う必要があります。

関連記事 慢性腎臓病(CKD)の予防・症状について

タバコとの関連性

慢性腎臓病の危険因子は次のものがあり、喫煙も危険因子の1つとなっています。


  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 脂質異常症
  • 肥満
  • 喫煙

なお、非喫煙者と比較して喫煙者は男性で1.26倍、女性で1.4倍のリスクがあるということが分かっています。

さいごに

喫煙によって発症、悪化する病気の一部を紹介しました。

タバコは今日辞めたからといって病気のリスクがすぐに下がるわけではありません。
非喫煙者と同程度になるまで10年以上かかると言われています。

将来病気になるリスクを下げたいのであれば、今すぐに禁煙を始めることをおすすめします。